約束~悲しみの先にある景色~

“お父さん”という概念に囚われずに何かが出来た事は、しばらく無かった気がする。


それが例えテスト中でも、お風呂に入っている最中でも、何となく私の頭の片隅には彼の存在があった。


要らないそれは、どんどん私の中でその存在を大きくし、本来考えなければいけないものを踏み潰してまで侵略しようとしてくる。


けれど、今日はそんな事は一切無かった。


私も、少し成長したのかもしれない。


ただそれだけの簡単な事が簡単ではなかった私にとってみれば、単純に幸せの一部になりうるもので。



「楽しかったー…」


家に帰り、自分の部屋に到着するなりベッドに大の字で寝転がった私は呟いた。


この寝方は、トユンさんから伝授したもの。


それにしても、このベッドはやたらと心地が良い。


低反発の枕に頭を委ねるだけで、気分が穏やかになる。


そう、まるで目を瞑ったら、直ぐに速攻で瞬間的に寝てしまいそうな……。


「駄目駄目!」


瞼が下がってくる寸前、私は自分の頬を軽く叩いて勢い良く起き上がった。


今日は行きと帰りの電車の中でも眠ったし、そもそも昨日で睡眠時間は確保しているから、余り寝なくても大丈夫だろう。


(勉強しよ、)


このままベッドに居るといつか寝てしまいそうなので、私は勉強机に向かって座り、数学のワークを取り出した。