もしも再婚すると仮定して、キムさんにだけは嫌われたくない。


「…優作?瀬奈も今言ってたんだけど、その……」


私が思わず話した内容がお父さんの事を話すきっかけになったのか、意を決した様にお母さんが口を開いて。


「前に話したと思うけど、ほら…私の離婚相手、…瀬奈に、暴力を振るってたの。それで、その事……。ずっとはぐらかしてたけど、言わなきゃいけないと思って。だから今、言っていいかな…?」


お母さんは、声を震えさせながら、けれどしっかりとした決意が見られる瞳をキムさんに向けてそう言った。


「あ、ああ。きっと、僕らの将来の為にも聞いておかないといけないだろうしね…。瀬奈ちゃんは、この話を聞いてても大丈夫なのかな?」


びくりと身体が震え、私はその反動で思わず下を向き、自分の固く握り締められた両手を見つめた。


お父さんの事は、思い出したくもないし話したくもないし聞きたくもない。


けれど、話さないと何も変わらない。


キムさんとお母さんの為にも、再婚の為にも。


だから、私は俯いたまま微かに首を縦に振った。


「…私も、話します………」


「えっ、瀬奈…?大丈夫なの?」


お母さんの心配そうな声に、私はまた微かに頷いた。