咄嗟に出た言葉だったから、何て説明すればいいか分からない私は、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「キムさんは、その…自分の息子さんの事を、皆の気持ちが温かくなる様な口調で話しているから、きっと家でも楽しく暮らしてるんだろうな、って………。でも、私はそうじゃなかったから……」


お母さんの顔が、青ざめていくのが分かる。



キムさんには、笑った顔が1番似合う。


それは、初めて会った私にも分かる。


だからきっと、キムさんの息子さんも笑顔が似合うだろう。


「キムさんの息子さんは、笑顔が似合うと思うんです。……でも私、お父さんの前で心から笑った事、物心ついた時からは無かった気がします…多分ずっと、泣いてたから……」


一時期、精神的に追い詰められた私は表情を捨てた。


お母さんの前だけで笑顔になったりしたけれど、お父さんの前では何をされようと、泣くか真顔で耐え抜いていた。


お父さんの前で笑う時は、私の心が壊れた時だと思っていた。



「あっ、………ごめんね、瀬奈ちゃ…」


私とお母さんの間だけで流れる重い空気を察したのか、慌てた表情をしてキムさんが謝った。


「あ、大丈夫です。私こそごめんなさい、急に話し始めて…」


慌てて、私は首を振った。