｢で、何でか分かんないけど俺らの家って2階建てなんだよね。まあそこはそういうものだって思っておいて。後、俺らの家は25階ね。…本当はもっと説明してたいんだけど、このままじゃ誰かにばれちゃいそうだからもう行こう｣


そう言ってトユンさんが歩き始める間にも、異変に気付いた周りの人達が足を止め始めて。



｢ねえ、あの人さ、どっかで見た事ある気がする｣


｢ハイタワーに向かってってんじゃん。有名人かな？｣


｢黒いマスクつけてるよ、アイドルかなんかじゃない？｣


｢この辺に住んでる有名人って言ったら、プロゴルファーのあの人とか？…アイドルならpromiseの、｣


そこまで聞こえた途端。


｢やっべ、瀬奈ちゃん走って、！｣


ずっと俯き加減で早足だったトユンさんが急に後ろを振り向き、彼の後ろを歩いていた私の手を引っ掴んで走り始めた。


｢あれ、promiseのユンちゃんじゃない？｣


｢嘘、ユンちゃん！？｣


｢日本に帰ってきてたの！？｣


｢やば、サイン貰わなきゃ！写真も撮ってもらいたい！｣


後ろから聞こえる、ユンちゃんを求める沢山の人々の声。


｢俺の変装、良いと思ったんだけどなっ…。このままじゃマンション入れないから、回って裏口から入ろ！｣


私は走りながら何とか頷き、ふっと後ろを振り返った。