おとうさんの腕が前後に揺れると共にすぐに右首に痛みが走り、赤が溢れ出した。


破けたパジャマを染める真っ赤な血は、何本もの道を作って我先にとその幅を拡大していく。


(え、)


(何、何これ、痛い!?)



初めて味わう刃物の痛みに、今までよりも強い恐怖に、直感的に、反射的に、瞬間的に、


“本当に殺される”


と判断した私は。


『あ"あ"あ"あ"あ"嫌あぁぁあっっ!』


身体をくねらせ、片手で流れ続ける赤を押さえ、そう叫んだ。




「…っ、嫌ああぁあー…!」


(……えっ、?)


息と共にその言葉を吐き出した私は、自分の震える声に驚いて目を覚ました。


何があったのか良く分からないまま、充電中のスマートフォンを開いて時刻を確認する。


まだ、深夜の2時過ぎだった。


「何、…」


豆電球のお陰で、何とか視界は良好だ。


(視界は、良好…)


そう考えた時、不意に私の頭の中に、初めてお父さんが私の首元を包丁で切ったあの光景が鮮明に映し出された。


「ひっ……!」


また寝る体勢に入りかけていたのに、私は恐怖の余り勢い良く起き上がって自分の枕を抱き締めて。