安眠を妨害された怒りの欠片も無く、今では


(今日は徹夜確定だ…)


(お母さんは何処なのっ?)


という2つの思いしかない中、


『っ……お、お父さんっ…!』


私は悲鳴を上げる身体を少し動かし、掠れた声を絞り出した。


パジャマの袖がまくれた腕からは、古い傷や痣はそのままに、赤くなって新しく痣になろうとしている所が何個もあって。


『そう思ってんなら言う事聞けよクソが!』


大きくバットを振りかぶったお父さんは、勢いをつけて私の胸に叩きつける。


バシンッ、という音と共に、私は少しの間痛みで呼吸が出来なくなる。


『うっ………!』


痛さというよりも、自らの身を守る為に涙が流れて止まらない気がして。


『おい、俺に何て言うんだよ!』


『……っ、ごめんなさい、』


遂に平手打ちをされ、口の中は血で鉄の味がする。


その鉄を唾ともに飲み込み、私は謝った。


『違うだろ!“生まれてきてごめんなさい”だろうが!』


(…やだっ……)


自分が生まれた事を否定したくないのに。


この世に生を受けたのは、何か理由があると思っていたのに。


否定したくないのに、否定しなければいけなくて、そうしないと死ぬかもしれなくて。


だから。


『っ、……うぅっ、生まれてきてごめんなさいっ…』


私は、嗚咽と共に全てを吐き出した。