約束~悲しみの先にある景色~

「うん、そうだよ。なん……」


「凄っ!私、家に帰る前にその車見たんです!運転席に男の人が座ってたから、もしかしたらお金持ちとかの人が此処の団地に何か用があるのかなって思っていて、でもそれがまさかキムさん達の車だったなんて…」


それは、本当に凄過ぎる。


絶対にお金持ちの人の車だと思っていたら、その車の所有者がキムさん達だなんて。


まあ、トユンさんは日本中に名を轟かせているあのアイドルだし、キムさんもお母さんと同じ職場に転勤した後に日本と韓国を往復して仕事をしているらしいから、よくよく考えれば納得出来るのだけれど。


(しかも、あそこに座ってた人が運転手さんだったなんて…、凄過ぎるしドラマみたい…)


そう考えながら、夢みる乙女の様に顔をほころばせると。


「いや、ドラマなんて…。運転手も高級車もこの世に沢山あるし、別に大した事じゃ…」


私は知らず知らずのうちに自分の考えを声に出していたのか、キムさんが何とも言えない顔で突っ込みを入れてきた。



ただ、そのコメントが少し辛口な気がして。


(えっ、…)


キムさんからたったそれだけの言葉を言われただけなのに、私は目の前が真っ暗になった気がした。