約束~悲しみの先にある景色~

「えっ、でも私、あなたの事……」


知ってる気がして、と言いかけると、


「うちの息子はまあまあ有名だからね、どこかで見た事はあるかもしれないよ」


キムさんが良く分からないフォローをし、


「うん。…本当に分からない、俺の事?」


“知ってるよね、?”


と、また期待に溢れた目を向ける息子さん。


そんな目で見られると、彼の名前を当てなければいけないというプレッシャーがかかってしまうではないか。


「いや、多分分かると思うんですけど…」


随分最近に見た気がする顔なのに、どうしてもそれが誰か思い出せない。


(知ってる気がするんだけどなぁ…、)


私が、彼の顔を凝視したまま眉を寄せて考え始めようとした時。


「んー、じゃあ、これでどう?」


キムさんの息子さんは急に後ろを向き、自分のバッグから何かを取り出して頭に付け始めた。


そして次に振り向いた時、彼の頭には白いヘアバンドが巻かれていて。


(あっ!)


何処かで見た、この光景。


私は思わず、片手で口を押さえた。


そんな私を見て、“分かるかな?”という表情をするキムさん達3人。


「えっと、えっと……」