約束~悲しみの先にある景色~

「…っ、ありがとうございます」


俯き加減でそうお礼を言った私の唇は、その嬉しさからか微かに弧を描いていた。


(2人共、全然怖くなさそうだし…)


私が、考え過ぎていただけだった。



そう、明らかな自分の勘違いに気付き始めてまた恥ずかしくなりかけた時。


「宜しくね、瀬奈ちゃん!…ちなみに、俺の名前分かる?」


「ん……?」


急にキムさんの息子さんにそう投げ掛けられ、驚いた私は弾かれた様に顔を上げた。


私の目線の先には、何故か期待に満ち溢れたキムさんの息子さんの顔。


焦げ茶色の髪に、それと対象的な雪の肌。


前髪はセンター分けされていて、右耳には金色のピアスが光っている。


こちらに期待を向けるその両目は、キムさんとは違って一重で、それでいて嫌な圧はなくて。


彼の1つ1つの顔のパーツが整っていて、モデルが出来そうなその容姿に、私は思わず見とれかけて。


(あれ、待ってこの人……何処かで)


彼に似た人を、つい最近見た気がした。


何処で見たかは分からない。


前にすれ違ったのだろうか。


「あの…私と会った事、ありますか?」


何処で会ったか分からないのに、何故か確信がもてた私がそう聞くと、


「いや、それは分からない……」


彼は、曖昧に首を振った。