約束~悲しみの先にある景色~

怖い、もう無理、私は必要な存在だと誰かに言われたい。


その思い3点セットが、私の身体中を血液と共に駆け巡り、


(お兄ちゃんっ…!)


例の想像上の兄の事を思い出して、居ない彼に縋りかけた、その時。



「ん、あれ?大丈夫?」


誰かの声が、聞こえた。


(っ……、)


たった漢字3文字の言葉なのに、それが私を覆い隠すどす黒い感情を吸い込んでいく。


(あっ、……!)


その言葉に導かれる様に、私の視界ははっきりとしていって。


ゆっくりと瞬きをすると、私の視線の先には心配そうに眉を下げたキムさんの息子さんの姿があった。


それだけでもう、真っ暗で怖いあの感情は無くなっていた。


ただ、キムさんの息子さんのその声に反応し、キムさんは心配そうな表情を、お母さんは“大丈夫?”と目だけで語りかけてきたけれど。



「え、えと、私ですか?…だ、大丈夫です」


徐々に身体の震えが止まっていくのを確認しながら、私が頷きながらそう言うと。


「あ、本当?何か急に真っ青な顔して震え始めたから、具合悪いのかと思った。…大丈夫なら良かったよ」


それまで小首を傾げていた彼は、キムさんと同様花が咲いたかの様に笑った。