約束~悲しみの先にある景色~

(私が居ると、皆私に気を使うよね…)


お母さん達の笑い声が、瞬時に聞こえなくなる。


(そんな事ない、皆優しいから大丈夫)


自分のせいで芽を出したあの感情が、どろどろと溶け出していく。


(でも、根拠は?根拠が無い…。って事は、やっぱり……)


やばいよ今の状況考えて、落ち着いて!、と、私の頭の何処かがブレーキを踏んでいるけれど。


(私、私は……!)


『お前は死ぬべきだ』


『俺がこの手で殺してやるよ』


お父さんからの沢山の罵倒語が、私の頭を支配して。


一瞬、私はリビングに戻り、ドアの目の前に立ってキムさん達の話を聞いているこの状態を完全に忘れた。


そして代わりに思い出すのは、理由を知らない、知りたくないあの恐怖と、底無しの悲しみ。


(やだ、……)


(私、要らなくなんてない、)


何度も忘れようと努力したはずのお父さんとの要らない思い出の蓋が、ゆっくりと開き始める。


「っ……!」


部屋は暖房のお陰で心地良い温かさなのに、身体が震え出す。


(やだ、やだ、私はっ……!)


もはや何に拒否をしているのか、“私は”の後に何の言葉が続くのかすら分からないまま。