ひなりが目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。傍らには母親と医者の姿が見えた。

「ひなり!良かった…無事で…」

ひなりが目覚めたことに気がついた母が目に涙を浮かべながら言った。

「お母さん、ひなりさんは骨折などはされていないし、内臓にも問題なかったのですぐに退院できますよ。でも、体育などは見学させて…安静にさせて下さいね。」

医者が母とひなりに優しく言った。

骨折…してなかったんだ…

ひなりはほっとしたが、すぐにある事を思い出した。

「お、お母さん…れい…閨川先生は?」

『れいま先生』と言いかけて慌てて言い直した。

「ああ、授業があるみたいで帰られたわ。『暴力を未然に防げなくて申し訳ございません。』って仰ってた。」