「『先輩』?…いきなりどうしたんですか?確かに俺の方が1つ年上ですけど…」

いきなり後ろから抱きしめてきた歌那美の腕を丁寧に離しながら、閨川が尋ねた。

「…やっぱり…覚えてませんよね…」

歌那美は呟くように言った。
そして、閨川の目を真っ直ぐに見つめた。

「閨川先生。あなたは、桜ヶ丘中学2年A組、3年C組、理研部の閨川玲眞先輩ですよね。お久しぶりです…と言ってもほぼ初めましてに近いですね…私、桜ヶ丘中学1年B組、2年C組、合唱部の音咲歌那美です。」


そう。歌那美はその他大勢の男子生徒はどうでも良かった。全ては、入学当初校舎で見かけて一目惚れした1学年上の閨川に振り向いて欲しくてやったことだった。