あの後、成瀬ひなりはすぐに下校させた。

夜、音咲歌那美は、職員室で残業をしていた。
職員室に残っているのは彼女と、彼女の1つ年上の男性教諭、閨川玲眞だけだった。

静かな職員室に、歌那美がパソコンのキーボードを打つ音と、閨川が使っているペンの音だけが響いている。

「あ、そういえば音咲先生。」

ふと、閨川が歌那美に話しかけた。

「はい?」

「さっき校長先生が呼んでるって言ってましたけど、校長先生の所に行ったら用はないって言われましたよ?誰かと間違えました?」

作業をしながら質問してきた閨川に、歌那美はパソコンを打つ手を止めて答えた。