昨日のことが原因で一睡もできなかった二ノ瀬レムは、通学路を歩きながら一人溜息をついた。
親友である成瀬ひなりがいじめられても助けなかった自分。
ひなりのことが好きだと思いながらも、閨川のことが好きなひなりはどうしても受け入れられない自分。
これまで、ひなりのためならなんだって出来ると思っていたレムにとって、そんな自分は本当に情けなかった。

「レ…レム…?」

下を向いて歩いていたレムが顔を上げると、そこに立っていたのは大親友のひなりではなかった。

「あ、荒野?」

かつて友達だったレムに警戒心を含んだ口調で且つ苗字で呼ばれ、荒野栄華は少し寂しそうな顔をした。