「まぁ、貴方はもしかして、グリーンピアトのマロンディス皇子ではありませんか? 」

「え? 知っているんですか? 」

「はい、時折り雑誌などで拝見しております。・・・初めまして、私はこの地底を守っています、ミネバと申します。小さいながら、地底では「女王」と呼ばれております」

「地底の女王様ですか。申し訳ございません、不躾にお邪魔してしまいまして」

「いいえ。お怪我をなさっていらっしゃるのですね、手当いたします」

 女性ミネバが微笑むと、マロンディスの体がふわりと浮かんで、そのまま移動した。



 ゆったりとした客間に通されたマロンディスは、そのまま怪我の手当てをしてもらった。

 手当と言っても治癒魔法でほとんど治してもらった。

 あとは体力が回復するまで、暫く休むように言われた。


「すみません、大変なご迷惑をかけして」

「いいえ。あ、申し遅れましたが、貴方を助けましたのは私の娘シルビアです」

 シルビアはそっと頭を下げた。

「娘様なんですね、よく似てらっしゃいますね」

「よく言われます。時々、地上に遊びに行くのですが。怪我をした人を連れてきたのは、初めてですよ。地上とは違いますが、体力が回復するまでは、ごゆっくりされて下さい」

 一見は厳しそうな顔をしているミネバだが、内面はとても優しく話しやすい人で、マロンディスはホッとした。


 地底の世界はとても静かで、食べるものは地上と同じではあるが、殆どが根菜が多く、お肉は何日も煮込んだ柔らかいお肉の料理が多い。

 お魚は少なく、お米もなく、殆ど小麦で作ったパンを主食としている。




 数日後。

 マロンディスの体力も回復してきて、歩くのもしっかり歩けるようになってきた。

「元気になられて良かったです。あ、お借りした上着、クリーニングしておきました」


 ハンガーにかけてあるダウンジャケットを手に、シルビアがとても優しい笑顔で言った。


 ソファーに座っていたマロンディスは、シルビアのそんな表情を見ると、とても嬉しくなる。

「これは、ここにかけておきますね」

 クローゼットの中にハンガーをかけ、シルビアは一息ついた。