結婚して15年。

 現在38歳になったジュリアル。

 父であるランフルクとそっくりな顔立ちのまま、目元は母であるメディーラに似てきて穏やかになったと言われている。

 王妃として女神のような存在のジュリアルは、国民からもとても慕われている。


「マロンディス。気分はどう? 体調、良くないんでしょう? 」

 虚ろな目を、フイッとそらしてマロンディスは何も答えない。

「風邪・・・じゃないわよね? 」

 ジュリアルはマロンディスに歩み寄って行った。

「ねぇ、マロンディス。貴方は知っている? パティーナが、時々、とても酷い怪我をしている事」

「え? 」


 虚ろだったマロンディスの目が、少しだけ見開かれた。


「知らないのね。アディールが言っていたの、パティーナが怪我しているって。でも、パティーナに聞いても何も答えないし、怪我も治っていることが多くて。使用人からは、時々、パティーナが何か悲鳴を上げていたって聞いてるわ」

「・・・どうして、そんな事・・・」


「ディアンナは、パティーナを虐待しているって噂されているのよ」

「虐待? どうして? 」


 ジュリアルは、後ろに持っていた封筒をマロンディスに差し出した。


「これ、読んでみてくれる? 貴方には申し訳ないけど、この6年、ずっとディアンナの事を調べさせてもらったの。結婚には反対はしなかったけど、納得していたわけじゃないから」

 封筒を見つめて、マロンディスは遠い目をしている。