「光莉、ちゃんとご飯を食べなさい!」
お母さんに叱られながら、私は家を飛び出した。
さすがに2日目となるときつい。
ご飯はなんとか我慢できても、なにも飲めないのが厳しかった。
でも__亮平のためだ。
ゲームでのことは現実世界で必ず起こる。けれど、指令をクリアすれば回避もできる。
今日1日の我慢だ。
さすがに3日も続くことはないだろう。
「あっ、光莉」
前を行く未知瑠に声を掛けるが、振り返った顔に元気はない。
「もっと笑って。せっかく恋が叶うんだからさ」
「うん、まぁ__ね」
なんだか歯切れが悪い。
「お腹すいた?そりゃ、すくよね。私も食べ物のことしか頭にない」
「明日は絶対にパンケーキ食べる!」
「生クリーム倍でね」
「5倍にしてやる!」
ようやく、いつもの未知瑠が戻ってきた。
「あっ、電話だ」
「彼から?」
「うん。先に行ってて」
「ガンバって!」
未知瑠を応援して教室に入ると、どこか雰囲気がおかしい。
友美の周りに、変な輪ができている。
「ちょっと、なんなの?」
その輪をかき分けると__友美が俯いていた。
机の上には、深皿が置かれている。
その中には__固形のドッグフード?のようなものが入っていた。
「犬は犬らしく食べろって躾(しつ)けをしているところなの」
そう言ってにんまり笑うのは、池岩由佳だった。