あと2マス。


ゴールが手の届くところにある。


私は振り返った。


スタート地点が、もう随分と遠くにある。


「これで終わりなんて、なんか寂しくない?」


昨日の友美と同じことを、未知瑠も感じているらしい。


いや、亮平もこのゲームのお陰でレギュラーがとれた。


どちらかというと寡黙な彰も、サイコロを振る時は勝負師の目をしてて楽しそうだ。


クラス委員の板垣なんて、なんの接点もなかったけど、彼女もできて喜んでいる。


いつも独りの友美も、仲間が出来たと喜んでいた。


私たち全員に幸せをもたらしたゲームが、終わろうと__。


「まだ終わらせない」


サイコロを胸に、私は高々と宣言する。


「リターンのカードを使う」


「うーん、戻ったところで3億円には届かないけど?」


天使が言ったが、それでも構わない。


3億円のマスまでは7マスある。けれどサイコロには⑦の目はない。


どう頑張ったって、届かない。


リターンのカードも1枚だけだし、戻ったところで無意味に思えるが、私の狙いはそれじゃない。


戻るまでのマス目にある【宝箱】だ。


中になにが入っているか分からない以上、チャンスはある。


宝箱まで3マス。


③を出せばいい。


けれど、それを外せばもう__終わり。


サイコロを持つ手に力を込めて、私は放った。