友美はずぶ濡れだった。


「あのクソ女!」


トイレを飛び出そうとした私を、友美が手を掴んで止める。


「いいの」


「いいことないじゃない!こんなことされて、黙ってるほうがおかしいわよ!」


今すぐ殴りつけて、便器にあの清楚な顔を突っ込んでやりたい!


私も以前は友美をからかったりはしたが、ここまで直接的ないじめをしたことはない。


友美は、これをずっと耐えていたのか?


たった1人で__。


「ありがとう」


「えっ?」


「私の代わりに、怒ってくれて」


はにかむ友美を、ハンドタオルで拭いてやる。


「早く拭かないと、風邪ひくし」


「風邪ひいたら、サイコロ投げられないもんね」


そう言って軽く笑う友美。


私が勝手に参加者の欄に【佐野友美】と書いたのに、どこか友美は嬉しそうで。けれど少しするとその表情が曇り出した。


「元気だしなって。またあいつにやられたら、私にいいな」


だから私は、友美を元気づけたが。


「ううん、違うの。もうすぐゴールだから、もう終わっちゃうんだなって思うと、少し寂しくて」


「あぁ、そっか」


「だって、せっかく仲良くできたのに」


俯いてしまった友美に、私は言った。


「もう【友達】じゃん。あのゲームが終わっても、友達だし」


ちょっと照れ臭いと思いながらも、友達を笑顔にすることができたんだ。