3億円は取れないようになっている。


どうガンバっても、そこには止まれない。


リターンのカードを使っても、3億円までは7マスある。


しかも、前を見るとマス目は1つしかない。


つまり、もうゴールだ。


確か、誰かがゴールすればその時点でゲームは終わり。


そんなことばかり考えながら、私は学校の女子トイレに向かった。


もう、どうやっても3億円は手に入らない。


そもそもが手に入らないように設定されているのだが、ゲームでのことが現実に起こると知っている私は、なかなか簡単には諦めきれなかった。


リターンを使って⑥を出しても意味がないか。


「あぁ、もう!」


怒鳴りながらトイレに入ると、中にいた女子たちが一斉に振り返る。


その中心にいたのは、池岩由佳だった。


「あら、仁科さん」


そう満面の笑顔で微笑むが、とても嫌な感じがした。


なにか不穏なものを感じたからだ。


「どうぞ、そっち空いてるわよ」


入り口のほうの個室を指差すが、私は由佳たちがたむろしている奥を指差した。


「そっちがいいんだけど」


「ごめんなさい、こっちは混んでるから」


「待ってるからいいわよ」


そう言うと、由佳の目がすーっと細くなる。


しばらく睨み合いが続いたが、私が目を先にそらさないと分かったのか、観念して出て行く。


すぐに個室を開けると、そこには友美がいた。