私たちは、ゲーム上で起きた数々の【幸せ】を実際に体験した。


ようやく自分のマス目でイベントが発生した未知瑠は、翌日にんまりと微笑んでバッグを掲げる。


亮平は試合に勝ち、私は応援に行った帰りにナンパされた。


告白されたのは、なんとあの無愛想な板垣だ。


付き合ったかどうかは分からないが、私たちと目が合っても、以前のように睨んだりしない。


とっておきの秘密を分かち合ったように、目線を交わす。


周りには見えないところで関係性を深めていったんだ。


そしてそれは、友美も同じ。


アトピーが治った友美は、重苦しかった髪の毛をばっさり切ったことで、印象がかなり変わった。


「仁科さん、いつから佐野さんと仲いいの?」


そう尋ねてきたのは、池岩由佳(いけいわゆか)だ。


クラスでいうカーストトップに君臨する由佳は、なにかにつけて、友美をいじめのターゲットにしていた。


由佳が言葉を発するだけで、友美は震えている。


「別に、関係ないでしょ?」


「私はアドバイスしてあげただけよ。佐野さんと仲良くしないほうがいいかなって」


「どうするかは、自分で決めるから」


やや強めに言うと、由佳はぷいっと行ってしまった。


「__あ、ありがとう」


友美が、照れ臭そうにそう言った。


ゲームによって、私たちの関係性も変わろうとしていたんだ。