「おい、どういうことだ?」


彰が声を掛けると、友美がびくっと震える。


彰は怒っているわけではないのだが、男子にはいつも罵られているからだろう。


ショートボブになった友美が、俯いたまま近づいてくる。


「昨日、街で声を掛けられて、それで__」


「まさか、ヘアモデル?」


私がそう訊くと、友美は頷いた。


【スカウトされてモデル】になる。


「マジかよ」


亮平の呟き声は、みんなの心を代弁していた。


モデルはモデルでも、ヘアモデル。


確かに友美は、腰までの艶のある黒髪だった。体型や顔じゃなく、髪の毛単体なら考えられないこともない。


「良いことが起きるんだよ、このゲームで!」


すっかり喜んでいる未知瑠が、跳び上がっている。


「まだ信じられないがな」というクラス委員の板垣以外は、私たちみんな疑いはしなかった。


ゲームの世界が、現実でも起こる。


「それじゃあ、ゲームを始めよう!」


天使の呼びかけに、私たちはそれぞれのマス目についた。


「サイコロを投げる順番は、昨日の通り。じゃ、君からだ」


ふんわりと投げられたサイコロを受け取る。


何か良い目が出たら、そのまま現実に反映する。


また100万円とか出ますように。


サイコロに祈りを込めて放り投げようとした時だった。


見慣れないものが、視線の先に浮かんでいる。