「うー」


未だに恨みがましく唸る私とは違い、前を行く未知瑠はスキップしている。


「もう、いつまでしょげてんのよー!」


そう言って、私の腕を取りにくる。


「だって、だって、もう少しで100万円が__」


「いいじゃん、お小遣い貰ったんだから」


未知瑠が、ひらひらと万札を振っている。


そう、落し物の100万円をレジに届けたら、すぐに落とし主がやってきた。まだ店に居た私たちに、お礼にと1万円ずつくれたんだ。


「でも、100万円と1万円じゃ、全然違う!」


「文句いわないの!なんか美味しいもん食べに行こうよ!」


ぐいぐいと腕を引っ張られ、私もいい加減、気持ちを切り替えようとしたが。


未知瑠がいきなり立ち止まった。


「なによ?」


「光莉、それって、あのゲームの通りになったってことじゃない?」


「えっ?」


「ほら、100万円拾うってあったじゃん!」


そう言われて「あっ」と思い出した。


札束に興奮して、ゲームのことを忘れてたんだ。


確かにサイコロを振って進んだ目に【100万円を拾う】と出てきたが、それって現実に起こるってことなの?


でも__?


「あの井戸女が【モデル】になるんて、あり得ないっか。ただの偶然かー」


1人で納得する、未知瑠。


私のマス目が現実に起きたなら、佐野友美のマス目に書かれていたことも起きるはず。


だから、無いな。あいつがスカウトなんて。


そう思っていたのだが__。