「投げないなら、代わりに僕が投げるよ?でもそうすると、ペナルティーで君に悪いことが起きるけど?」
悪魔が手を伸ばし、私が抱えているサイコロに触れる。
何分、突っ立っていただろう?
でも、彰の代わりにサイコロを投げるということは、彰が居なくなったのを認めるようで嫌だった。
彰は起きているだけだ。
あんなけ眠っていたんだ。今さら、眠れるわけがない。
それをこの悪魔がまた、私をいたぶって遊んでいるだけ。
だからこんな憎たらしいサイコロ、叩きつけてやればいい。
そう思う一方で、悪魔の言っていることは本当なのだという、揺るぎない塊がどんどん大きくなっていく__。
この胸のざわつきを止めるには、確かめるしかない。
ゲームを早々と終わらせて、現実に戻るんだ。
そうすれば、嫌でも分かる。
「もうこれ以上、待てないよ」と、悪魔が私からサイコロを奪い取ろうとするので、その手をかわして転がした。
②が出て進むが、マス目に変わりはない。
次は由佳か?
だが、悪魔は私の前から動かない。
なに?
「アイテム、使うことはできるよ?」
「アイテム?」
「彼の獲得したアイテムは、君のものだから」
そう言って足元を指差す。
そこに【双眼鏡】が置かれていた。



