彼は、死んだから?


彼は死んだから?


カレハシンダカラ?


何を言っているのか、意味が分からなかった。


「なに言ってんのよ?彰は意識が戻って、私のことうるさいって、私の頭を撫でてくれて、もう心配ないって__」


そこまで言って、口を閉じた。


悪魔が、私を見ていたからだ。


その目に浮かぶのは__哀れみだった。


これまで、どんな時も私たちを気遣うことなく弄んでいた悪魔が、少し伏し目がちに私を見ている。


私を、哀れんでいる。


大切なものを失くした、私を__。


「うそよ」


「彼のぶんまでサイコロを投げてもらわないといけない」


「そんなのうそよ!私は絶対に認めない!」


断固として拒絶をすると、悪魔が困った顔をする。


悪魔のくせに‼︎


「でもあと数回でゲームも終わるよ。もうすぐゴールさ!」


場違いな明るさで、1番手の未知瑠にサイコロを渡す。


でもそのセリフは、彰のものだ。


みんなの落ち込んだ気持ちを、そう言って何度も励ましてくれた。


本当に、本当に彰はもう居ないの?


私がぼんやりする中、みんなが無言でマス目を進んでいく。


「はい、君の番だよ」


ふと我に返り、サイコロを受け取ってしまった。


私は最後だ。


まだ由佳も友美も投げていないのに。


次は、彰の番なのに__。