いや、そんなはずはない。


私も友美が屋上から落下するのを、見た。


あそこから落ちて命が助かるなんてこと、奇跡だ。


「あっ、やっと寝たみたいだね」


悪魔の言葉に顔を上げると、ちょうど黄金の光が集まってくるところだった。


細かな光の粒子が、やがて人の形となっていく。


彰だ。


やっと寝たんだ。


これで寝顔を見られなくてすむ。


変なところでホッとしていると、どんどん光は細かくなっていき__。


「えっ⁉︎」


悲鳴とも叫び声とも思える声が、屋上を貫く。


一歩後ずさった由佳は腰を抜かしたのか、尻もちをついた。


私も由佳ほどではないが、驚いて言葉も出ない。


どうして?


あの高さから落ちて、助かったのか?


ゆっくり立ち上がった友美は、由佳を一瞥するとにんまりと笑った。


「ど、どうして?」


「どうして?」


そう言って歩み寄ってくる友美に、由佳の体が激しく震える。


「まだ生きてるのよ。意識は戻らないけど、まだ生きてるの」


「そんなっ」


「仕留め損なったわね?でも私は病院で動けない。今なら、私を確実に殺せるわよ?」


「えっ__?」


「でもその前に、私が【爆弾】でなにもかも吹き飛ばすけどね」