屋上に現れた未知瑠は、顔を包帯でぐるぐる巻きにしていた。


目と鼻と口だけが、包帯の隙間から覗いている。


刺されたのは右側なのだろう、遠目で見ても顔の右半分が異様に腫れ上がっていた。


亮平が気遣うように寄り添っているが、未知瑠の目には私しか入っていない。


ずっと、私だけを見ている。


サイコロを投げるのも無言で、マス目を進むのも無言。


お通夜のようなゲームが、ただ進んでいく。


由佳に続いて、友美もサイコロを投げた。


どうやら爆弾は使わないらしい。


犬をしつける楽しみを、手放すことができないからだ。


その犬である由佳は、前だけを見ている。


もっともゴールに近いのが、由佳だ。


あと数回。


あと数回を耐え抜けば、この地獄からは解放される。


そう思っているに違いない。


最後に、私もサイコロを投げる。


マス目には変化はない。


今回は全員が、無事に前に進んだ。なにも起きないのは珍しいかもしれない。


でも__ふと顔を上げると、鋭い視線とぶつかる。


未知瑠が、私を睨んでいた。


未知瑠にとって、顔は命だ。それが見るも無残なことになった。それは私のせいだと思うのも無理はない。


向けられる眼差しには、はっきりと【殺意】が浮かんでいた__。