返品すればいい。
突き返してやればいいんだ。
こんなものを貰ってしまったから、とんでもないゲームに巻き込まれてしまった。
だから、私のせいじゃない。
私にこれをくれた、あのばばあが悪い。
万引きをずっと隠し撮りしていたくらいだ。
このボードゲームが恐ろしいものだと、知っていたに違いない。
叩き返してやる!
怒りに突き動かされるように、角を曲がった。
そこに【順弦堂】がある。
私が小さい頃から、ぼろい文房具屋はそこにあった。
駄菓子も売っていたから、いつもみんなが集まっていたんだ。
その頃から、あの婆さんは居た。
ずっと昔から、婆さんのままだった。
要らないと言っても、絶対に返して__や、る?
勇ましく突き進んでいた足が、ぴたりと止まる。
「なんで?」
誰にともなく、問いかけた。
でも、誰も答えてくれない。
【順弦堂】が___跡形もなく無くなっている。
ちょうど前を通りかかった小学生たちに「こ、ここにあったお店は?文房具屋!」と詰め寄ったが、全員が知らないと首を振った。
知らないはずがない。
ついこないだまで、あったのに__。
ばばあが姿をくらました?
私の手に、リアル人生ゲームだけを残して。