「最悪‼︎」


短く怒鳴ると、サイコロを思いっきり蹴り上げる。


「落ち着けって」


「無理!蜂とか絶対に無理!」


「家から出なきゃいい。窓も全部閉めて、ジッとしてれば多分、大丈夫じゃないか?」


亮平が、私たちの顔を見回す。


「一緒に居てくれる?」


「ああ、心配ない」


2人が抱き合わんばかりの雰囲気で見つめあっている。


私は、さっと彰と視線を交わす。


2人はなにも分かっちゃいない。


家の中に居ようが、どこに逃げようが、運命は変えられないことを。


私と彰は、板垣の家でそのことを目の当たりにした。


きっと、未知瑠は蜂に刺されるだろう。


いや、刺される。


これはもう決まったことだ。


あとは、どんな刺され方をするのか?


スズメバチなんかは、猛毒を持っているんじゃ?


一歩間違えれば、死ぬ可能性だってある。


といっても、そのことを伝えるつもりはない。


私がいるのに、見せつけ合うみたいにいちゃついて。


蜂にでもなんでも、刺されたらいい。


亮平と彰がサイコロを投げ終わり、由佳の番だ。


宝箱が2つ先にある。


由佳の目には、それしか入っていないようで、瞬きすることなくサイコロを放った。


起死回生の1投は__⑤だ。


「ざんねーん」


ただ1人、楽しそうな友美の見守る前で5マス進む。


マス目が、めくれ上がった。