翌朝、教室は異様な雰囲気に包まれていた。
友美の席に人だかりができている。
「犬、とっとと食えよ!」
そんな声が聞こえ、私は慌てて人垣の中に割って入る。
まさか、由佳が友美をイジメているのか?
ゲームの世界じゃ敵わないから、現実世界で八つ当たりをしている?
そんなことすれば、友美を怒らせて私たちは消滅してしまうじゃないか。
けれど、犬扱いしているのは、いつもの由佳の取り巻きで、ボス的存在の由佳の姿は見当たらない。
友美は机にしがみついて、攻撃に耐えている。
「あっ、由佳。こいつに言ってやってよ、お前は犬だって」
いじめっ子の1人が、教室に入ってきた由佳に犬の首輪を差し出す。
徹底的に【犬】にして、いじめ抜くらしい。
「由佳、早く」
仲間に急かされ、固い表情の由佳が首輪を受け取る。
いつの間にか、机に突っ伏していたはずの友美が顔を上げ___じぃーっと由佳を見上げた。
その目が、笑っている。
「なにやってんのよ?早く首輪してよ」
仲間、というより手下にせっつかれ、友美の首に手を伸ばす。
「__池岩さん?」
そう名前を呼ばれただけなのに、由佳がひっ!と息を飲み込んで首輪を落とした。
逃げるように、教室から出て行く。
そしてそのまま、由佳が戻ってくることはなかった。