「ゴールまでもう3分の1だよ。今日も元気にレッツ・ダイス!」


いつになく陽気な悪魔の合図で、リアル人生ゲームが開始する。


あと3分の1。


サイコロを投げるのも、あと数回で終わりだ。


それさえ乗り越えれば、ゴールにたどり着く。


この地獄のようなスゴロクが終わるんだ。


トップバッターの未知瑠が「よし」と気合を入れてサイコロを投げる。


順位の上でも、未知瑠が先頭だった。


あれから一言も口をきいてはいないが、一刻も早くゲームを終わらせたい気持ちは同じ。もう、昔みたいに元に戻れはしないが、なんならゴールしてもらってもいい。


これは順番を競うゲームではないからだ。


⑤が出て進む。


緊張した面持ちで5マス目を踏むが、なにも起こらない。


全員がホッと肩を撫で下ろし、次に亮平が投げる。


亮平は私に何度か、声を掛けてきた。


話がしたいと。


一体、なにを話すことがある?自分の浮気を正当化して、言い訳を並べ立てるだけじゃないか?


「私には話なんてなにもないから」


邪険に言って、私は目も合わせなかった。


亮平も未知瑠も、私は許す気にならない。


②が出て進む。


悪いことが起きればいいのに。


なんて心の中で思う自分が、いたりするんだ。