「意味わかんないんだけど!」
キレ気味に由佳が怒鳴る。
スタイル抜群で、読モもしているという由佳にとって、たとえ1kgでも大問題だ。
トップで居続ける努力は、並大抵ではないだろう。
「でも明日、10kg太ってるはずよ」
「そんなこと信じるとでも思う?やっぱりこれは夢よ。下らない夢」
全く信じようとしない由佳に、これ以上なにを言ってもムダだ。
とにかく前に進むしかない。
遠くに【ゴール】も見えてきた。
今日はなにも危険な目は現れず、終わった。
このまま終わってくれることを祈り、私たちは屋上から解散する__。
翌朝、板垣の葬儀に出ることになり、制服姿のままクラス一同が参列した。
「ちょっと、どういうこと⁉︎」
葬儀場で会うなり、由佳がそれはそれは恐ろしい顔で突っかかってくる。
スラリと長身で手足が長い由佳は、それだけで華があった。
でも__私には分かる。
由佳は【10kg】太った。
一見、分かりにくいが顎にも肉がついている。
「どうして1日で10kgも太るのよ!」
「だから言ったじゃない、ゲームの通りになるって」
「まさか、本当に?」
「そう。これから楽しくなるわね。また10kg太ったりして」
私がからかうと、由佳は顔を真っ青にして押し黙った。