板垣が、死んだ。


鼓膜を破るような爆音と、大きな地響き。


気づいた時にはもう、トラックはキッチンをなぎ倒し、そこにいた板垣の命を奪い取った。


家の中にいたのに。


カレーを温めるために、一階に降りた瞬間、見計らったように事故が起きた。


もしあのまま二階にいれば、板垣は死なずにすんだかもしれない。


もし私が代わりに一階に行けば、トラックは突入してこなかったかもしれない。


もし私が、参加者の欄に名前を書かなければ。


いくつもの【もし】が、襲いかかってくる。


病院や警察で事情を訊かれ、ようやく解放された私は疲れ果てて家に帰ってきた。


「光莉のせいじゃない」


何度もそう言って、彰が励ましてくれたが頷くこともできない。


側についていると引き下がらなかったが、1人になりたいと断った。


私のせいだ。


板垣の妹さんは、大きな声で泣いていた。


「お兄ちゃん!」と泣き叫んでいた声が耳から離れない。


あの子から、大切なお兄ちゃんを奪ってしまった。


私のせいだ。


私の__。


重い足を上げ、階段を登る。


ベッドに飛び込みたい。


泥のように眠りたい。


でも、眠ってしまえばゲームが始まってしまう。


そんな相反した感情が、私の中で爆発しそうだ。


大きなため息をついて、部屋のドアを開けた。