「驚いたな。カルドスの姫があんなに美しい方だとは。しかも式服で現れるとは。」
アンナの言葉にシドも頷いた。
ミラ様は滅多に表には出ないので、彼女の顔を知る人はこの国にはいなかった。
今回の訪問は他国からも注目されており、今夜の舞踏会はかなりの人数が国内外から集まっている。
一通りの挨拶を終えて、アンナとシドも付き添いミラ様の部屋に案内した。
今回特別に用意した客室はとても広く中は装飾品で飾られ家具も新しく新調した物ばかりだった。
ミラは部屋に入ると、表情を歪めた。
「…あの、部屋を変えてもらえないかな?」
ミラの言葉に一同が顔を見合わせた。
「あの、何か粗相がございましたか。もっとお広いお部屋が宜しかったでしょうか…?」
国王の側近でミラの世話係のテールが青ざめた表情で言った。
「とんでもない。こんなに豪華な部屋を用意してもらはなくても良かった。とは言え、またこれから新しい部屋を用意してもらうのも手間だ。今回はここを使わせてもらうが滞在中身の回りのことは自分でします。あなた達、」
ミラは部屋の中で荷ほどきをしていたメイド5名を呼び止めた。
「一人で十分です。後の方達は普段の仕事に戻って下さい。」
メイド達はどうしたらいいか分からない様子だったが、一人だけ残り後の四人は部屋を後にした。
ミラの振る舞いに、アンナとシドも呆気にとられた。



