ゆっくりと二人でお茶をしながらおしゃべりをした後、アリスは一人温室に向かった。

すると、シドが中に入って来た。


「…ソフィア様からここにいると聞きました。外におりますので」


「あ、待って。」


アリスは出て行こうとしたシドを引きとめた。

「舞踏会の夜、リアの事を助けてくれて、ありがとう」


「いえ…」


アリスはシドを前に手をギュッと握りしめた。


「ねぇシド。もし、私が…」


好きだって言ったらシドは困るわよね。


喉まで出かけた言葉をどうにか飲み込んだ。


すぐにハッとして、後ろに振り返った。何で今、シドに言おうとしたのか自分でも分からなかった。


近衛隊になる事はシドの夢なんだから…



「どうされました…?」


「…何でもないの。部屋に戻るわ。」


2人が温室から出て行くと、廊下の時計の影に隠れていたオーギストがひょっと顔を出した。


「…アリス様と、シド…?」


オーギストは暫くその場に止まり顎髭を触りながら何やら考え込んでいたかと思うと、ハッとしたような顔をしてすぐ去って行った。