「アリス様。アナモネア国ご訪問お疲れ様でございました。あちらでは大変な騒ぎがあったとか、ご心配致しました。」


相変わらず音楽会ではろくに演奏も聞かずにペチャクチャと煩く話しかけてくる夫人達にアリスはうんざりしていた。


ふと、熱心に演奏を聴く1人の女性に目が止まった。

あの方は確か名前はリア。

いつかの音楽会の時に王宮に越してきたばかりと言っていた。


「こんにちは。」

アリスは1人で演奏を聴いているリアの隣に行き声をかけた。

びくっと肩を震わせ振り返りアリスを見るととても驚いた顔をした。


「あ、こ、こんにちわ…アリス様。」

「驚かせてしまった?あんまり熱心に聴いてらっしゃるから気になってしまって」

アリスの言葉にリアは不思議そうな顔をした。


「いえ…あの、この集まりは音楽会で合っていますよね?」

「ええ、そうよ。」

「そうですよね。皆さんあまり演奏を聴いていないので、音楽会で合っているか不安になってしまって」

リアが安心したように言うとアリスはクスッと笑った。


「…皆んな話に夢中で音楽なんて聴いていないものね。可笑しいわよね。」


「あっいえ、そう言うつもりで言ったのでは……」


「ううん、貴方の言う通りだわ。座って一緒に聴きましょう?」


アリスとリアはソファに腰掛けた。

最後まで演奏を聴くと2人とも拍手をした。


「…素晴らしい演奏でしたね」

「ええ、とても。」


目をキラキラさせて奏者達に拍手をするリアの横顔を見てアリスはなんだかとても居心地が良かった。


「王宮での暮らしは慣れました?」


「…いえ。私の家は落ちぶれた貴族でしたので、こんな華やかな暮らしはしてこなかったんです。母が再婚したので王宮で暮らせるようになりました。」