「今夜は王宮で舞踏会か?」
「ええ。アリス様の護衛があるから夕方までには王宮に戻らなくては」
ルカはある酒場の扉を開けた。
店主が薄暗い店の中でグラスを拭いている。
「…まだ店が開く時間じゃありませんよ。」
「すまない、人を探していて。この者に見覚えはないか?」
ルカはキトの写真を差し出した。
店主は眼鏡をあげて写真を見た。
「この男なら最近毎晩ここに来てるよ。たいして酒も飲まないのに11時頃から明けた2時くらいまでいるね。」
店主の言葉にルカとアンナは顔を見合わせた。
2人は詳しく話を聞いた後店を出た。
「…アンナ、一度戻ってアート隊長に伝えてくれ。俺は今夜またここに来る。キトかどうか確認をする。」
「分かった。今夜はアート隊長は城を離れられない。私とシドが来ることになると思う。」
すると、ルカはじっとアンナの顔を見た。
「…なに?」
「いや、お前シドの事信頼してるんだな。」
ルカの言葉にアンナはドキッとした。
「…そりゃ、部下のことは全員信頼している。」
ルカはふっと笑みを溢した。



