アンナとルカは広場の噴水に腰掛けた。
「…キト孤児で教会のシスターに育てられた。わたしの叔父上が父親代わりとなり養子にした。キトに魔力があることが分かったのは5歳の時だ。力をコントロール出来るように叔父上が魔法の使い方を教えた。」
シドはキトの目撃情報をメモした用紙を広げた。
「キトは魔力が強いの?」
「ああ。我が国で魔法使いは殆どいない。ハデス家でも半分もいない。魔法を乱用しない事は100年続く掟だ。だがキトはその掟を破った。」
アンナはルカの横顔を見た。
「…キトは一体なにをしたの?」
「…叔父上を殺しかけた。」
ルカは拳を握りしめて言った。
そんな、育ての親を殺しかけたなんて…
ルカは立ち上がるとポケットに手を入れて2.3歩歩いた。
「掟を破った物の魔力を消す。俺は必ずキトを見つけなければいけない。」
「…私達も協力する。とにかくキトの目撃情報を頼りに探そう」
ルカとアンナは目撃情報があったルカントという王都の中では少し治安の悪い町に向かった。
ルカントは酒場が多くアネモネアの法律では禁止されている遊廓もある裏町だった。
建物は古く、道端には酒瓶を片手に座り込む者の姿もある。
「この国には魔法使いもちらほらいる。ルカはこの裏町で悪さをする魔法使いらを求めてここへ来たはずだ。」
酒場を片っ端から調べて回る事にした。
まだ昼間だといいのに、酒に酔った客がちらほらいる。



