得体の知れないことに変わりはないけれど、話してみたらわりといい人っぽいし、なんかちょっとおもしろいし……危険な人じゃないのかもしれない。


そもそも危険だってのも、状況から見た私の単なる妄想に過ぎないわけで。

あぁなんだ、けっこう大丈夫そうじゃん。



「ナオ」



なんて呼ぼう。直也って呼び捨てするのはさすがに失礼だけど、夢の国のキャラみたいにマッキーなんて呼んだら怒りそうだし……

なんてうだうだ考えてみたけれど、安心したら口からするりと答えがこぼれた。



ナオくん。



「私、真木さんのこと、ナオくんって呼ぶよ」



なんだか似合わない呼び方が逆にいい気がして、自信満々に彼を見やると──



「え……」



彼は、目を大きく見開いて固まっていた。


まるで、メデューサの呪いにかけられてしまったかのように。



「ナオ、くん……?」



心配になって声をかけると、彼はハッと我に返って、ようやく視線が絡んだ。


夜に残る暑さのせいか、その額にはうっすらと汗が滲んでいる。



「ごめん、嫌だった? さすがに馴れ馴れしいかな」


「あ……いや、そうじゃなくて」