「この1ヶ月、たくさん……それこそ、毎日考えた。あのバカが望まないことを、あいつのことを見守るって決めた私がしてもいいのかって」


「京香さん……」


「相手が茜ちゃんじゃなかったら、きっと、迷わずあいつを選んでた。そうすることが、私に残された役目だと思うから。……でも」



汗をかいたグラスが、テーブルの上に戻される。


その拍子に、中の氷がカランと鳴いた。



「茜ちゃんは、圭太の妹なんだもん。圭太の最期のことも……直也とのことについても、話を聞く権利が、茜ちゃんにはあるんだもんね」



いつも凛とした京香さんの声が、ろうそくの灯りが隙間風に揺れるように震えた気がした。



「1つだけわかっていてほしいのは……これはあくまでも、私が知る2人の話だってこと。

気をつけて話すけど、主観も混じっちゃうかもしれないから……それだけは理解しててね」



そう前置いて、京香さんは静かに記憶のページをめくり始めた。










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前にも言った通り、私と直也は高校の先輩後輩でね。

同じ高校に、あなたのお兄さん……圭太もいたの。