「咲乃の恋人だよ」

「嘘!じゃあ、あなたが暴走族の総長さん!?ねえねえ、姫って本当にあるの!?あ、玲、私もお茶いる!」



さっきまで深刻な話をしていたとは思えないな。



母さんは新城の戸惑いなどおかまいなしに詰め寄る。


二人分のお茶を注ぎ、机に置く。



「母さん、少し落ち着いてくれるか。私も新城も雑談する気分ではない」

「えー、なにそれ。私には関係ないもの」



……子供か。



しかし私たちが本気でそんな気分ではないと感じ取ってくれたのか、母さんから笑顔が消える。



「咲乃ちゃんのことでなにかあったの?」

「咲乃が死んだ原因がわかっただけさ」

「……そっか。よかったね」



母さんはそう言うだけで、詳しくは聞いてこなかった。



「あ、そうだ。ねえ、玲。今の高校に通い続ける気、ある?」

「男子校だぞ?」



それでなくても佑真がいて通いにくいというのに。



「あのね、そこ来年から共学になるんだって」

「そうなんですか?」



私よりも先に新城が返答した。



「そこの校長って、あの人のお兄さんの先輩なんだって。なんか、女子を入れても大丈夫かの確認のために玲の編入を許したとか」