私の質問の意図がわからないのか、佐倉さんは首を傾げる。



「いえ……咲乃に彼氏ができたっていう噂が流れてからは少なくなっていました」



ということは、事故にはほぼ無関係と考えてもいいだろう。


予想外の事実があったが、本来の目的を考えると、収集なしだ。



「二人とも、大事な時期に申し訳なかった。またゆっくり咲乃の話をしよう」



そう言いながら、立ち上がる。


近くでずっと黙って聞いていてくれた先生のほうを向く。



「先生も、無茶言ってごめんなさい」

「気にするな」



先生は笑顔を取り繕う。



まあ、無理もないか。


生徒のいじめの話を聞かされたのだから。



私は改めてお礼を言い、講義室を後にした。



校門をくぐって、新城に電話をかける。



「はい」

「今話が終わった」



中学校からの下校の道を歩きながら、佐倉さんたちに聞いた話をする。



「咲乃がいじめって……嘘だろ?」

「私がこんな趣味の悪い嘘をつくとでも思うのか」

「……だよな」



要件が終わり、互いに無言となる。



「……なあ」



それは聞き逃してしまいそうなくらい、低く小さな声だった。