律歌はふうとため息をつく。

「あてもなく行ってはみたものの……収穫は、北方面についてちょっと見知っただけね」

 ちらっと北寺の顔を見やると、励ますように微笑まれた。

「いい運動になったけどね。気持ちよかった」
「……徒労って言わないのは北寺さんの優しさかしら」

 付き合わせて申し訳なく思えてくる。

「いや、本当にだよ。りっかとサイクリング楽しかった」
「私は楽しくなんかないわ」
「おや、そう?」

 そう返されてよっぽどへこんだような顔をする北寺。

「そうよ――体が痛いわ」
「大丈夫? きつかったかな」
「ちがうっ、……そ、そうだけど、痛いのは構わないの。痛い思いしたのに何も見つからなかったことが……嫌」

 あれだけ走ったのだ。もっとすごい何かが見つかると期待していた。でも、現実はこんなもんか。