「生きてたら、辛いこともある。絶望することもある。でも命は捨てないで。生きていれば、また希望を見つけられる。死んじゃったらもう……、なんにもできない」


私の肩が濡れていて、彼が泣いていることに気づいた。


彼の腕に力がこもって、こんな至近距離でも聞き取るのがやっとの声で「生きてよ」と言った。


「何があったかは知らないけど、死んだらそこから抜け出すこともできないんだよ」


その言葉にはっとした。


いじめから抜け出したくて死のうとしたけど、死んでしまったら結局抜け出せないままで終わってしまう。


「ありがとう」


私は背中に回された彼の腕をそっと触った。


 彼は私が先輩であることに気づき、怒鳴りつけたことを謝罪した。


でも、もし彼がいなかったら、今頃私は死んでいたかもしれない。


そう考えたら、今さらになってゾッとした。


私は勇気ある後輩に恥じないように生きると心に誓った。