静かだった外から、突然気配がする。



降り積もった雪の中では有り得ないスピードで走る音。



それは当たり前のように大木の前で止まる。



そして、扉と雪の向こうから、心のどこかで待っていた、嫌いなはずの声がした。



「お嬢様!ここにいるんでしょう!?」



叫び声は城に常駐しているはずの、アオイ。



「今出します!」



その声が聞こえてからは一瞬だった。



キラキラと雪の溶ける音。



アオイが魔法を使ったのだと、すぐに分かった。



''怒られる''


そう思いながら、恐る恐る扉を開いた。