森の中は更に真っ白だった。
動物の声もせず、珍しくしんと静かな森。
途中、テッドの家を通り過ぎようとしたところ、窓が開く音と聞き覚えのある声があたしの足を引き止めた。
「アリス!今日も麓に行くのか?」
「えぇ。水曜日だもの」
「今日はやめといた方がいい。これ以上雪が降り積もると帰れなくなる」
「大丈夫よ。この数ヶ月通って道は完璧に覚えた。少しくらい雪が降ったって帰れるわ」
「今日はダメだ」
「お願い。あと少しで出来そうなの。足元の雪くらいは溶かせるし」
パチンと指を鳴らし、じわーと自分の足元の雪を溶かしてみせた。
「ね!」
テッドが眉間にシワを寄せて、口を紡がせた。
「今日は早めに戻るんだぞ」
「分かったわ!心配ありがとう!」
そして、雪が積もった、いつもお茶会をしているテーブルの横を軽快に走って過ぎ去った。


