「アリス!ドレスはどう?サイズピッタリでしょう?」



ハートの女王が子どものように飛び跳ねながらやってくる。



「えぇ、とても気に入ったわお母さん」



ひらりとドレスを靡かせ、綺麗に一礼し、母を喜ばせるための上辺だけのセリフを並べる。



「そうでしょう。この日のために何日もかけて用意させたのよ」



いつもより声のトーンもボリュームも大きく、頭が痛くなりそうだ。



「ありがとう」



言って心無い笑顔を向けた。



実の母であっても、女王のことは苦手だった。


わがままで自分勝手で、周りを振り回して。

それに周りが疲れてしまっていること、当の本人は気付いていない。