「お嬢様、せっかく作った花冠、城へ持ち帰りましょう」


側近のアオイが、あたしが作ったいびつな花冠を右手に、アオイが作った綺麗な花冠を左手に持って言った。



「いいわよ。そんなの」


口を尖らせるのは得意だった。


きっとアオイにとってあたしは厄介なワガママ姫。


それでも懲りずに笑顔を向けてくれるのが、本当は好きだった。



「また一緒にここへ来ましょう。約束です。そしてこの約束を忘れないためにも。ね?」


言いながら、綺麗な方の花冠をわたしの頭に乗せた。



「そんな口約束、まるで夢物語みたいね」


それでもその時はアオイのその言葉に救われた。




憂鬱なお城への帰り道もなんだか少しだけいつもより鮮やかな色が付いて見えた気がした。