視線の右下に、茂みに入ろうとする野ウサギがたった今覗いていた鏡を咥えてこちらを見ているのに気が付いた。 「犯人はあなたね。盗っ人うさぎ。それはあなたにはもったいないわ。返しなさい」 きつくそう叱ってみせるが、知らん顔でうさぎは茂みに入った。 「あ、待ちなさい」 慌ててうさぎを追いかける。 まるでどこかのおとぎ話のよう。 誕生日にうさぎを追いかけるなんて。 うさぎはどんどん森へ入っていく。